相続税について、考えることはありませんか?
そのタイミングは、高齢の両親が病気をした時や大黒柱の夫が倒れた時など様々だと思います。
もしも相続をすることになったら、相続税という税金はどれくらいかかるのだろう?
そんな不安が湧いてきませんか?
相続税という言葉を聞くと、高額な税金を取られてしまい結局何も残らなかった、なんて話も聞いたことがあります。
今回は、一軒家を相続したらどのくらい相続税がかかるのかを調べ、節税対策についても考えてみました。
一軒家の相続税はどのくらい?
一軒家を相続すると、相続税はどのくらいかかるのでしょうか。
一軒家の大きさや土地の広さによって相続税は変わってきますが、そもそも一軒家の価値を評価するだけでは、実際に支払うことになる相続税額は計算できません。
一軒家だけの相続税額の計算はできない
それでは、なぜ一軒家だけでは相続税額の計算ができないのでしょうか。
その理由は、相続税は財産ごとに分けて計算するのではなく、相続する財産の総額に対し、いくら払うかが決まるためです。
家の価値がいくらなのかは重要な要素ではあるものの、それだけでは相続税額を算出できません。相続財産の総額を算出する必要があるのです。
では財産の総額を計算するためには何が必要でしょうか。
まず最初に、相続税の課税対象と非課税対象について確認してみましょう。
・課税対象
1.現金、預金、不動産、貴金属、書画骨董など(日本国内だけでなく海外所有のものも含む)。
2.みなし相続財産(死亡保険金や死亡退職金のように亡くなってから受け取るもののこと)。
貴金属のように金銭的な価値のあるものは全て課税対象といわれても納得ができます。
しかしながら、死亡保険金や死亡退職金にまで相続税がかかるのは、亡くなった時のお金やこれまで働いてきた証のお金にまで…とがっかりしていまいますよね。
ですが、これらも現金とみなされるので必然的に相続税として認識しなければなりません。
子供のため、孫のためと貯めていた名義預金すら課税対象になるので注意が必要です。
・非課税対象
1.墓地・墓石・仏壇・仏具・仏像・神棚・庭内神し(ていないしんし)
2.相続人が国や地方公共団体などに寄付した相続財産
非課税対象となるものは、お寺などが税金を優遇されるのと同じように営利目的でないものです。
財産を現金で残さずに、墓所を生前に購入しておくこともある種の節税といわれています。
まずは遺産総額を算出
一軒家の相続をする際、相続税額が気になるのであれば、まずは一軒家以外にどのくらいの遺産があるのか調べる必要があります。
遺産の総額を計算してからでないと、トータルの相続税額は算出できないということを覚えておきましょう。
総額をもとにどのように計算するかは、後ほど詳しくご紹介します。
次は、一軒家の価値を評価する方法について見ていきましょう。
一軒家の評価は「土地+建物」
一軒家の評価は、土地と建物それぞれの評価額を合算する形で決定します。
それぞれの評価方法を詳しくみていきましょう。
土地の評価方法
土地の価値は、4つの評価方法によって決まります。
・実勢価格(市場で売られている価格)
・公示価格(国土交通省が毎年公示している価格)
・路線価(宅地1平方メートルあたりの価格)
・固定資産税評価額(固定資産税がかかる価格)
土地の相続税は路線価をもとに評価され、路線価で評価できない土地は倍率方式で評価されます。
それぞれ詳しくみてみましょう。
路線価
路線価は、様々な人が利用する一般的な道路に面した宅地、1平方メートルの評価額のことをいいます。
毎年国税庁が8月頃に発表しており、「今年、日本で一番高い場所は銀座の〜で、1平方メートル当たり〇〇万円です。」というような話を耳にするのではないでしょうか。
または「今年は、昨年より◯%上昇している。」と聞いて、なんて高い土地なんだと思ったことがあるかもしれません。
実際に一軒家を相続するとなると、この路線価がいくらかによって相続税が変わります。
倍率方式
土地の相続税を算出するにあたり、路線価格だけで土地の評価の全てができるわけではありません。
例えば、亡くなった方が地方の山や畑を所有していたすると、路線価格がついていないことが稀にあります。
そのような時に用いられるのが倍率方式です。
倍率方式において土地の価額は、固定資産評価額に一定の倍率をかけて計算します。
固定資産評価額は市区役所や町村役場などで確かめることができます。
また、相続する土地は路線価格なのか倍率方式なのかを確かめるには、税務署で「財産評価基準書」を見て確認するか、国税庁のホームページ上にある「路線価図・評価倍率表」を見てみましょう。
評価減額となる特例などは要チェック
一軒家を相続するにあたり「相続税が高額」、「節税できたら…」と思うことでしょう。
実際に相続税を節税できる制度はあるのでしょうか?
まず、小規模宅地特例という節税方法はご存知ですか。
この制度は、相続人の負担が大きくならないように設けられています。
一軒家を相続するということは、少なからずその家での暮らしや生活があります。
相続税が生活に影響を及ぼさないためにも、小規模宅地特例を活用しましょう。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、宅地を相続するにあたり相続財産としての評価額を低く計算してよいという制度です。
評価額によって相続税額が決められるので、評価額が下がると相続税は安くなります。
一軒家の場合は、居住用になれば80%の引き下げがあり、一軒家でも事業用として賃貸している場合は50%が引き下げとなります。
このように不動産の評価額を下げることができれば、税金として納めなくてはならない金額は減額できます。
ただし、こちらには土地の面積の上限があったり、取得者要件があったりするのでご注意ください。
一軒家などの相続税を節税したいと考えたとしても、相続をする前に行う節税対策が一般的なのですが、小規模宅地特例は相続が決まってからでもできる制度となっているので覚えておきましょう。
その他評価減額となる方法
小規模宅地特例の他に、土地の評価減額により評価が下がり相続制も減額となる土地があります。
・歪んだ形の土地
歪んだ形の土地とは、奥行きが長い土地、間口が狭い土地、L字型や三角形の土地などを指し、評価減の対象になります。
・私道、セットバックにかかる土地
様々な人が通る私道は、評価額が0円になります。
また、行き止りの私道とセットバックについては、評価額が30%減になります。
・崖地
崖のある土地は、崖地部分の補正率をかけて土地を評価するので、減額となります。
・地積規模の大きな宅地
首都圏、中部圏、近畿圏の地積は500平方メートル、それ以外のエリアについては1,000平方メートルの地積において評価額が減額されます。
一軒家を所有している場合、自己所有の宅地はどんな形なのか、私道との関係性はどうなのかなどを事前に把握しておきましょう。
いざ相続をするとなった時に、節税ポイントがすぐにわかります。
建物の評価
つづいて、建物について
建物はどのように評価されるのでしょうか。
建物の評価は、固定資産税評価額をもとに計算をします。
毎年5月頃になると納税通知書が届きますよね。この時期は、自動車や土地など様々な税金の納税書が送られてくる時期です。
固定資産税の納税書を見ると、価格という欄に書かれた金額が、建物の固定資産税評価額になります。
建物の相続税を計算するには、相続が決まった年の固定資産税評価額に1.0をかけて算出します。
例えば評価額が2,000万円なら、2,000万円に1.0をかけた2,000万円が相続税の建物評価額になるのです。
相続税額の計算
一見難しそうに感じる相続税額は、どのように計算するのでしょうか。
計算方法の簡単な流れとしては、居住または所有している一軒家の評価とその他の相続財産を計算し、合算します。
次に基礎控除を調べ、相続税の申告手続きが必要かどうかも確認します。
さらに詳しく見ていきましょう。
一軒家の評価とその他相続財産を合算
まず、亡くなった方の残した遺産がどのくらいあるのか計算します。
居住していた一軒家があればその評価と、その他の相続財産を合わせて遺産相続の総額を算出します。
前述の通り、この時に一軒家の相続税の場合、小規模宅地特例の検討をすることで節税につながることを覚えておいてください。
基礎控除などを確認
遺産額の計算ができたら、基礎控除などを確認しましょう。
相続税は全ての人にかかると思われがちですが、そうではありません。ある一定額以上の財産を残して亡くなった場合だけにかかるものなのです。
この「ある一定額」のことを「基礎控除額」といいます。
基礎控除の計算式は下記となります。
・3,000万円+相続人の数×600万円
例えば、一軒家に父・母・子供1人で住んでいて、父が亡くなり相続人が母と子供のみだった場合、上記の計算式から4,200万円が基礎控除額となります。
もし相続人の子供が3人だったら、基礎控除額は5,400万円となります。このように相続人の数で基礎控除額は変わります。
基礎控除額がわかったら、合算した遺産総額から基礎控除額を引き、その金額が課税遺産額になります。
課税遺産額が基礎控除を超えなければ、相続税はかかりませんのでご安心ください。
また、配偶者が遺産取得した場合の税額には、1億6,000万円までの控除があるので税金がかかりません。
それでは配偶者が一軒家など全てを相続すれば、相続税がかからなくてよいのでは?と考えてしまうかもしれませんが、遺言があったり、遺言がなかったとしても法定相続分があったりと、相続には相続人同士での話し合いが必要になります。
また、もし話し合いの結果で配偶者が全て相続することを決定したとしても、「二次相続」のリスクを忘れてはいけません。すべてを相続した配偶者である人が亡くなった場合、その子などへ相続することになりますが、その際に相続財産が多ければ、その分相続税額は高くなってしまいます。
このようなリスクが存在することを考慮した上で、配偶者の基礎控除については活用するとよいでしょう。
申告が必要かどうかも要確認
一軒家などの相続税は、亡くなってから10ヶ月以内に一括で税金を納めなくてはなりません。
少しでも過ぎると、ペナルティとして罰金を支払うことになります。
延長は例外として特殊なケースのみになるので、延長は不可と考えたほうがよいでしょう。
では、相続税を支払うにあたり誰でも相続税申告をする必要があるかといえば、そうではありません。
遺産総額が3,600万円以下であれば相続税申告は不要です。
それ以上の金額になると、相続人の数によって相続税申告のあるなしが変わるので、要確認となります。
土地の評価は専門家でも難しい
これまでは一軒家などを相続する際に知っていてほしい、「土地の評価による減額」についてお伝えしてきました。
方法についてお伝えしてきたものの、正確に土地を評価することは専門家でも難しい作業になります。
土地を評価するためには、どの土地を評価するのか様々な条件に合わせて区切り、評価の単位を決めることが必要となります。
土地の評価単位は、いくつかのステップに分けて区別します。
まずは地目(宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地)ごとに分けます。
地目ごとに分けたあと、次は権利ごとに分けます。
権利に関しても、例えば両親夫婦と長男家族が同じ土地に一軒家を2棟建てていたとすれば、この場合は宅地の評価は一体になります。
では一軒家ではなく賃貸アパートを建てていたらどうなるでしょうか。
その場合、地目は同じなのですが、賃貸アパートには住んでいる人の借家権というものが発生します。ですので一軒家と賃貸アパートの評価をしなくてはなりません。
そして最後に、だれが取得するかによる区別です。
地目や権利で一体評価になっていたとしても、この部分はAさん、この部分はBさんという形で取得者が変わるのであれば、その取得する土地ごとでの評価が必要となります。
このように土地の評価は複雑なため、自分たちで調べて評価するのは極めて難しいことです。
専門家でも難しい分野のため、そこはプロに任せたほうがよいでしょう。
まとめ
一軒家を相続するといくらかかるのか?節税はできるのか?など、気になるところでしたが、一軒家などの相続税は事前に調べておくと節税もでき、いざ相続するとなった時に慌てずにいられます。
難しいといわれる土地の評価なども、専門家に任せきりにせずある程度の知識として知っておくとその鑑定が正しいのか、それとも間違っているのかを判断する材料になります。
ぜひ今回の節税法も頭の片隅に置いていただいて、本当に必要となった時に一軒家などの遺された遺産を無駄なく相続ができるようお役に立てると幸いです。