世の中には、知らないと損をしてしまうことがたくさんあります。この記事でご紹介する賃貸物件を相続することで節税を行う方法は、まさにこれに当たるでしょう。
今回は、そもそも相続税をどの様に計算するのかをはじめ、実際に賃貸物件の評価額を計算する方法や、相続について相談できる専門家についてご紹介します。
相続税の計算と控除について
相続税を計算するためには、いくつかの段階を踏む必要があります。この段階を飛ばしてしまったり、疎かにしたりしてしまうと、誤った税額で支払い、意図せず納め漏れてしまう可能性がありますから、きちんと理解しておきましょう。
課税対象になる財産を計算する
まず、課税対象となる全ての財産を洗い出す必要があります。全ての財産というのは、
・相続財産
・みなし相続財産
・相続開始前の3年以内に贈与された財産
・相続時精算課税制度が適用される贈与財産
の4つに分かれます。
相続財産
相続財産は、一般的に誰もがイメージする財産のことです。例えば土地や建物、株式、現金、預貯金、債権などです。
絵画やゴルフの会員権、著作権、売掛金といった、一見見逃してしまいそうなものも、金銭に変えられるものは全て財産とみなされます。
みなし相続財産
これは、死亡退職金や生命保険金など、故人が亡くなった時に発生する相続財産のことです。これらは一般的な相続財産と異なり、非課税限度額という、法定相続人の数に応じた非課税の範囲が決められています。
生命保険金も死亡退職金も、
500万円×法定相続人数
が非課税限度額となっています。もしも、これを超えて発生してしまった財産がある場合は相続財産とみなされ、課税されます。
相続開始前の3年以内に贈与された財産
被相続人がなくなる前の3年以内に贈与されたものは、課税対象になります。通常、贈与には贈与税がかかるのですが、この場合は相続税がかかります。贈与はなかったものとみなされます。
相続時精算課税制度が適用される贈与財産
相続時精算課税制度は、その字面通り、相続時にその財産を精算し、課税をする制度です。具体的には、親や祖父母から財産の贈与を受けた際に、2500万円までなら贈与税が非課税になり、その代わりに贈与した方が亡くなった場合にその財産を相続財産の扱いにするという制度です。
この制度を利用できる続柄や年齢は限られています。
・贈与する側が60歳以上
・贈与される側が20歳以上
・贈与する側とされる側の関係が親子か孫と祖父母
相続税の課税価格を計算する
全ての課税対象となる財産を洗い出したところで、
・非課税財産
・債務や葬式費用
を課税対象となる財産から引きます。残ったものが、課税価格です
非課税財産とは
非課税財産は、その名の通り課税されない財産です。先程ご紹介したみなし相続財産のうち非課税分もこの非課税財産に含まれます。また、墓地や仏壇、墓石、神棚にも相続税はかかりません。
債務や葬式費用
相続税を計算する際は、遺産総額から債務を差し引くことができます。債務に含まれるのは、被相続人が死亡したときにあった債務で、確実とされるものだけです。また、葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算する際には、遺産の総額から引くことができます。
遺産に係る基礎控除額を計算し、課税遺産総額を計算する
相続税の課税価格が算出できたところで、最後に遺産に係る基礎控除額をここから引いて課税遺産総額を計算します。
基礎控除額は、
3000万円+600万円×法定相続人の数
で計算することができます。
例えば、法定相続人が夫と子ども1名であれば、
3000万円+600万円×2=4200万円
となります。
もしも遺産額が基礎控除額よりも少ない場合は、相続税はかかりません。
この基礎控除額を相続税の課税価格から引いたものが課税遺産総額となります。
相続税の総額を計算する
相続税の総額を算出するには、まず課税遺産総額から、相続人それぞれの仮の相続税額を計算します。
相続人それぞれの仮の相続税額は、
相続人それぞれの仮の相続税額=課税遺産総額×法定相続分×税率-控除額
で計算できますので、それらを合算して相続税の総額を計算します。
このときの税率、控除額というのは、法定相続分に応じた取得金額によって異なりますので、注意してください。
実際の相続税額を計算する
それぞれの相続人が実際に支払わなくてはならない相続税額は、相続税の総額をそれぞれの遺産を得る割合で按分することで計算します。
それぞれの相続人の相続税額=相続税の総額×(それぞれの相続人の課税価格÷相続税の総額)
最後に、税額控除や税額軽減の特例を適用したものが、相続税額として納める額になります。
税額軽減・税額控除の例
相続税額から最後に惹かれる税額軽減や税額控除の例をご紹介します。
・配偶者の税額軽減の特例
配偶者が得た遺産が法定相続分、もしくは1億6000万円以下であれば、配偶者は相続税を課せられないという特例です。
・未成年者控除
20歳までの1年あたり10万円の控除が受けられます。
・障害者控除
85歳までの1年あたり10万円の控除が受けられます。特別障害者は20万円の控除が受けられます。
賃貸物件の相続税評価額の求め方
ここまで、相続税額の計算の仕方について解説してきましたが、ここからは、賃貸物件の相続税評価額の求め方をご紹介していきます。
土地の評価
不動産のうち、土地を評価する際には、2つの評価方法があります。
それは、
・倍率方式
・路線価方式
の2つです。
倍率方式は、地域ごとに定められている評価倍率を、相続した土地の固定資産税評価額にかけて計算する方式です。
また、路線価方式は、路線価と呼ばれる、国税庁から発表される、道路に割り当てられた1㎡あたりの価格によって計算する方法です。
この2つの方式のどちらを適用するかは、すでに地域ごとに決められているため、自分で選ぶことは出来ません。土地の相続税評価額は、いずれの方式でも、実際の価格よりも2割程度低くなります。このため、現金と土地に変えておくことだけでも、節税には効果的です。
建物の評価
不動産のうち、建物の評価は、固定資産税の評価額が基準となります。建物の相続税は、実際の価格に比べ、4割程度安くなります。
賃貸物件の購入は相続税対策に有効
土地には、自分が持っている自用地と、人に貸し付けている貸宅地が存在します。
土地の相続税評価を行う場合には、自用地であるか、貸宅地であるかで評価額が大きく変わります。というのも、自用地に比べて貸宅地は評価額が大幅に安くなるからです。同様に、建物も自宅用の家屋と貸家では、その評価額は大きく異なります。
貸家建付地の評価額が低い理由
自用地というのは、自分が持っていて、他人に貸していないため、いつでもその土地にあるものを壊し、更地にしてしまうことができます。そのため、便利で使い勝手の良い土地として、高く評価されるのです。
一方で、貸家建付地というのは、アパートやマンションを建てて人に貸している土地です。つまり、いつでも更地にすることはできず、更地にするためには立ち退き料を支払わなくてはなりません。このため、貸家建付地の評価額は下記のように計算されます。
貸家建付地の評価額=自用地だった場合の価格×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
このうち、借地権割合は地域によって異なり、約60%~70%程度です。
また、借家権割合はおおよそ30%と決まっています。賃貸割合というのは、マンションやアパートでは入居率と考えると分かりやすいでしょう。20室のうち15室に入居中だと、75%となります。
貸家の評価額が低い理由
建物である貸家も貸家建付地と似た考えです。建物が異なるのは、建物の固定資産評価額を元に考える点です。算出する式は以下の通りです。
貸家の評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
賃貸物件は評価額が低くなるため、節税に効果的
ここまでご説明したように、賃貸物件を取り巻く土地は自用地だった場合よりも、そして貸家は固定資産税の評価額よりも大幅に評価額が安くなるということがお分かり頂けたのではないでしょうか。
土地やアパートを個別に持っている場合も、貸すことによって節税対策になりますし、もし両方とも持っている場合は一番評価額を安くできます。
法人化することでさらにお得に
相続対策で購入したアパートやマンションを経営する際に、法人化をすることで、より一層節税対策となります。というのも、アパートやマンションの所有が法人のものとなるため、相続税の対象に含まれなくなるからです。
賃貸物件の種類によって計算は異なるので注意。分からなければ専門家に相談を
いざ、実際に賃貸物件を購入して相続税対策を行う、もしくは検討している場合、自分だけで考えて動くのはハードルが高いものです。そこで、税金の専門家に相談することで、安心して相続税対策を行いましょう。ここからは、相談できる機関や専門家をご紹介します。
税務署
税金のについて分からないことが合った場合に信頼して相談できるのが税務署です。国が運営している機関なので、特に損得などを考えずに相談できます。
また、全国に窓口が設置されているため、わざわざ遠くに出向く必要もありません。遠すぎて窓口まで行けないという方でも、電話で匿名相談を受け付けているため、活用することをおすすめします。窓口に並ばずとも、予約をすることで時間を無駄にすることなく相談することができます。
ただし、国が運営している機関ですから、世の中で通例となっている節税対策の方法は教えてくれず、まっとうな回答以外は期待してはいけません。また、新人の担当がついた場合、知識がまだ足りずに相談に対して的確なアドバイスをくれない場合があります。さらに、税金の算出などは自分で行う必要があるため、そのつもりで相談を受けるようにしましょう。事前に何を聞くかまとめておくと、時間を有効に使うことができます。
日本司法支援センター(法テラス)
法テラスは、相談先が不明な場合に相談先を指南してくれたり、自分が抱えている問題を相談し、的確な場所に繋いでくれる羅針盤のような役割をしてくれる機関です。こちらも税務署と同様に国が関わっている機関であるため、安心して相談をすることができます。
法テラスが特徴的なのは、弁護士や司法書士を雇うための費用が足りない場合に、立替えをしてくれるサービスを提供してくれることです。自分が金銭的に問題を抱えており、それでも法律について、相続について相談したいという場合には強い味方担ってくれます。
無料のサポートダイヤルもあるため、家の近くに法律について相談できる機関や専門家がいないという方でも、気軽に相談することができます。対面での相談をしたいという方も、無料で3回までなら一つの相談について、対面で相談できます。一方で、法テラスは問題を解決してくれる機関ではなく、あくまで羅針盤のように道を示してくれる存在です。実際には紹介してもらった専門家に相談を持ちかける必要があります。
税理士
税理士は、上記2つの機関と異なり、相談も有料となる場合があります。しかし、税金の専門家とあって、書類の手続きや書類の作成を代行してくれます。また、経験が豊富であることが多く、今までにさまざまな状況の相談を受けているため、問題を理解し、解決に導いてくれるスピードも早いです。
税理士によっては、無料で初回の相談を受けているという場合もあるため、気になる税理士がいる場合は、問い合わせてみると良いでしょう。
まとめ
今回は、相続税がどのように計算されるのか、そして何が相続対象となるのかを整理したうえで、賃貸物件を相続した場合の相続税がどのように計算されるのかを解説しました。
せっかく莫大な財産を相続したとしても、相続税の額も莫大となると、実際に得られる財産は減ってしまいます。今回ご紹介した賃貸物件を購入し、評価額を下げることによって節税する方法をとれば、相続税を賢く節税できるかもしれません。さらに、法人化して賃貸物件を経営すれば、より多くのお金を節税することも可能です。
次の世代に相続税対策をしておきたいという方は、ぜひ賃貸物件を利用した相続税対策を検討してみてはいかがでしょうか。相続に関して不安や相談事項があれば、専門家に相談するのが吉です。まずは無料で相談できる機関や専門家に話を聞いてもらいましょう。